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一章:武術の始まり

戦争の始まりは縄文時代?弥生時代?

日本で空手を語る上で、欠かせないのが武道という言葉です。
これは後々、明治時代を語る際に詳しく触れますが、武道というカテゴリを指す言葉ができる以前は、武術という言葉で呼ばれていたと言われています。

空手というのは武術です。
この武術というものの歴史を知らなければ、武術の本質を知ることができず、空手の本質に辿り付くことは永遠に不可能なのではないかと私は考えています。

そこでまず武術の歴史を知ってもらいたいのです。
武術とは、“武の術”と書きます。

武とは何でしょうか?
武と聞くと、武士、戦…など闘いのようなものを連想します。

武とは何でしょうか。
私達の国にある武という概念は、いつ頃から始まったのでしょうか。

平安時代末期に完成されたといわれる日本最古の兵法書“闘戦経”という書物には、こうした文章があります。

~我が武なるものは天地の初めに在り、しかして一気に天地を両(わか)つ。雛の卵を割るがごとし。故に我が道は万物の根元、百家(ひゃっか)の権與(けんよ)なり。〜

現代語訳にします。
~私たち日本人の「武」というものは天地の初めからある。その「武」の力によって天と地がわかれた。それはまるで雛(ひな)が卵の殻を割るように自然なことであった。私たち日本人の「武」は全ての根元であり、様々な考えの大元である。〜

「武」というものを単なる喧嘩のような“争い”として見ると、人が“ヒト”である前から存在したかのように思えます。
現代でも、兄弟喧嘩や友達同士での争いなど小さないざこざはあるので想像しやすいかと思います。
そうしたいざこざを「武」と呼べるかというと、まず「そんな大層なものではない」と感覚的に分かりますよね。
所詮、喧嘩は喧嘩、争いは争いであり、それ以上でもそれ以下でもないのです。

武とは“戈(ほこ)を止める”と書きます。
ここでいう“戈(ほこ)”というのは、武器そのもののことではありません。
ここでの戈(ほこ)の解釈は、集団での強弱争いや殺傷など、一個人の力で解決不可能な非生産的暴力と考えます。
そうした“戈(ほこ)”を止める“のが“武”なのです。

話を縄文時代に戻しましょう。
縄文時代にそもそも“戈(暴力)”はあったのかという話です。
縄文時代には戦争がなく平和であったという説があります。
しかし、まだまだ証拠が不十分であった為、本当に平和であったのか否かは、まだまだ未知の部分があるというのが現在の解釈です。

縄文時代草創期(13000年前~9000年前)の愛媛県の上黒岩にある岩陰遺跡からは、鹿の角でできた槍が刺さった経産婦の腰骨が出土されました。
生前、または死後に突き刺されたという見方がされています。
これは不慮の事故に巻き込まれて命を落とした可能性もありますし、死後に儀礼、儀式として槍を突き刺した可能性もあります。

他にも、縄文の各時期に矢尻が刺さった人骨が出土されていますが、縄文人骨全体からは、すごく少数なので、“戦争があった”と考える証拠は不十分なのです。

私個人の解釈になりますが、争いが少なく、そうした視点ではある意味、平和といえる時代だったのかもしれませんね。
では、いつ頃から戦争が始まったのかというと、水田が始まった頃ではないかと言われています。この時期を縄文時代後期とするのか、弥生時代とするのかは様々な議論があり、弥生時代の定義を500年ほど前倒してはどうかなどの議論もあります。

しかし、なぜ、お米作りと戦争が関係あるのかというと、お米作りには長期間、定位置に住み続ける必要があることに理由があります。

縄文時代草創期から中期にも、畑で作物を育てることはありましたが、基本的に狩りの状況によって居住区を移動させた先での短期間であって、水田とは大きく異なります。
そうなると、人々は集落(ムラ)を形成し、リーダーが誕生します。そして、集落共有の財産(お米などの食物)を保持することとなります。

それが部族となります。
そうした部族は様々な地域に多発し、点在することになります。
そうなると部族によって食糧事情に差が出て、他の部族の財産を奪おうと考えます。 そして、強い部族のリーダーは、他部族を管理下に置き、より大きな財産を手に入れようと考え、部族同士の戦争を繰り返します。

この状態が、冒頭の闘戦経で述べたところの“天地のはじめ”を指します。
それぞれが生きることに必死で、善悪などを決定づける規律などがない状態です。

その証拠に、縄文時代後期、解釈によっては弥生時代には、戦争があった証拠が増えます。
特に九州北部では、武器によって殺害された多くの人骨が、一箇所にまとまって出土しています。 この時期を戦争が生まれた時代と解釈する学者もいるくらいです。

そうした戦争が始まりと共に、“武”という概念は誕生したのです。


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